話数単位で選ぶ2020年TVアニメ10選について。

 今年の総括。

 ルールは
 ・2020年放送のTVアニメ。
 ・1作品1話まで。
 ・順位は付けない。



1,『22/7』 第7話 「ハッピー☆ジェット☆コースター」
脚本:大西雄仁 絵コンテ・演出:森大貴 作画監督:三井麻未、田川裕子、川村幸祐、木藤貴之、りお、凌空凛、飯野雄大
 痛いくらいに青い空。焼けるような夕空。ジュンに映る世界をビビッドに描いたこの話数は忘れられない。
 序盤、直線的な光と影を使ってジュンの世界を二分するカットが印象に残るが、それ以上に隠れる場所さえ作り出してくれないキツい青色の空が脳裏に焼き付いた。呼吸器の病とそれによって作ることのできない居場所。その環境から逃れる術もなく空に晒され続けるジュンを映す容赦なさに息を呑む。
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 そこに現れる悠。悠はジュンに影という安息地を与えてくれるが、それだけではなくて、「人生は遊園地だと思う」という前向きな言葉を与えてくれた。日向へ落ちるジュンには穏やかな光とアクシデントに笑える心が注がれる。
 このシーンのカット割り、レイアウト、光と影の演出が本当に素晴らしい。目線詰め、飛行機雲、光と影…一つ一つ分解していくと「新しい演出」ではないと思うけど、その組み合わせ方とそれぞれの色味にすごくこだわりを感じる。その熱量にぐっとくる。
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 悠が亡くなったことを知ったジュンに突き刺さる夕焼け空と飲み込まれるような夜空、玉ボケした光。そして窓枠に小さく映る青空。
 ジュンの心の揺れ具合と、遠ざかった悠との距離がいくつもの空で映される。ジュンの激流のような感情の動きが空から伝わってくるようで、圧巻だった。
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 再び青空のもとを走り出すジュン。ジェットコースターのようなアップダウンを突き抜けていくかのように、かつて眩しく見えた飛行機雲をめがけて走っていくジュンの後ろ姿。その勇気溢れる小さな背中にエールを贈りたくなった。
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2,『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』 第11話 「破滅の時が訪れてしまった… 後編」
脚本:清水恵 絵コンテ・演出:井上圭介 作画監督:井本由紀、竹森由加、澤入祐樹、大槻南雄
 転生後の世界と前世、それぞれにある繋がりの描き方が大好きなエピソード。
 寝たきりで意識が戻らないカタリナへ異世界での友人たちが想いを伝えるシーンでは、カタリナのメイド・アンが一人密かに涙をこぼす演出にグッとくる。
 そして前世での親友「あっちゃん」との一時の再会シーンが素晴らしい。校舎と夕景で終わりのときを感じさせつつ、いつもの調子でゲームの話をするカタリナ。二人にとって当たり前の時間でありながら大好きな時間であったことが伝わる切り抜き方だ。
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 別れの瞬間、指先だけ触れる芝居が素晴らしい。感謝と惜別の気持ち…二人の感情が指先に詰まっているようで、息を呑んだ。
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3,『イエスタデイをうたって』 第8話 「イノセント・ブルー」
脚本:田中仁 絵コンテ・演出:堀口和樹 作画監督:渥美智也、山野雅明、山本恭平、立口徳孝、長尾圭吾、永田杏子、寿門堂、菊永千里、海保仁美、菅原美智代、上野沙弥佳
 一話、もしくは一作品を通して幾重にも積み重ねられていくような演出が好きだ。
 『イエスタデイをうたって』8話では扉を使った演出がそれで、作中内の「停滞」と「進展」を上手に描き出していた。「開けない」という演出だけ切り取っても扉の前で佇んだり、鍵を出すだけであったり、開けかけて閉じたり…いろんな描写があってその時々にある「停滞」にバリエーションがあったのが印象的。そしてその演出が登場人物の感情を描くということに見事にハマっていた。

関連:雑感雑考『イエスタデイをうたって』8話 扉の演出、仕草の演出について。http://zakkanzakko.seesaa.net/article/475415029.html


4,『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』第6話「ヒロメネス」
シナリオ:田沢大典 絵コンテ:小島正幸 演出:孫承希 作画監督:諏訪真弘、清水海都、高橋瑞紀、谷紫織、安田祥子、北原安鶴紗、世良コータ
 Bパートを中心とした浜辺のシーンの密度がとても良かったエピソード。誰かを信頼することを諦めてしまったヒメコだが、ほわんの誠実な言葉を受けて心を通わせる。
 波のように寄せては返す二人の衝突を何度もイマジナリーラインを超えて信頼関係を気づいていく演出がとても良い。二人をフルショットで映す、対峙の構図をシンプルに映し出すからこそ響く演出だ。
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 さらにグッときたのは二人が心通わせ、抱き合ったあとの時間経過演出。
 カメラをゆっくりとPANさせながらオーバーラップで時間の経過をたっぷりと見せる。カメラの高さはそのままに、寄り添った二人に繋ぐアイデアもとても良い。ベスト・オブ・オーバーラップ賞があったらノミネート間違いなし。SBR6.gif

 シーンラストの手を繋ぐ芝居も素晴らしかった。ほわんに「歌って」と言われて「一緒なら良いよ」と返すヒメコ。アプローチされ続けたヒメコから小指でアプローチをかけるのというのがまた良い。SBR6-2.gif

 いずれもコンテ担当・小島さんのアイデアだろうか。二人だけに流れる時間を丁寧に、繊細に切り取っていくような職人技に痺れた。


5,『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』 第11話 「みんなの夢、私の夢」
脚本:平林佐和子 絵コンテ・演出:伊礼えり 作画監督:市原圭子、伊礼えり、尾尻進矢、北島勇樹、木村文香、鐘文山、舘崎大、冨吉幸希、山内尚樹
 歩夢の「私の夢」に対する感情が爆発するまでの導火線の引き方と、爆発の演出が素晴らしい。
 Bラストまではひたすらに導火線を張り巡らせるカットを綿密に積み上げる。みんなの前では極端な陰りの表情を作っていないところが、歩夢のままならない感情を上手に演出している。一方で一人きりのときには「私の夢」に対するメランコリックな表情を映す。
 突き放すことができずいる「みんなの夢」、置き去りにはできない「私の夢」。サブタイトル「みんなの夢、私の夢」の読点に詰まった歩夢の逡巡が浮き彫りになっていく。
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 「みんなの夢」、せつ菜と侑の関係性の誤解、さらに歩夢が知らない侑の「私の夢」を聞いて爆発する歩夢の気持ち。せつ菜とのことについてはキッパリと否定する侑、その受け止めっぷりをカメラブレとトメで演出したカットも素晴らしいが、そのあとの侑の「私の夢」を聞いたあとの演出アイデアが見事。挟み込む足に重なるスマートフォン。差し込む直線的な夜の光。それぞれにある「夢」の存在と相手への熱度を情感的爆発力の高い演出で一気に畳み掛ける。導火線部分がおしとやかだった分、歩夢の感情を中心に渦が巻くような演出アイデアに圧倒させられた。
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6,『ヒーリングっど♥プリキュア』 第2話 「パートナー解消!?わたしじゃダメなの?」
脚本:香村純子 絵コンテ:やしろ駿 演出:村上貴之 作画監督:下谷美保
 桜と出会い。何度も見てきた演出ではあるけれど、それぞれの作品に良さがあって、見るたびに心動かされる。
 本エピソードでの桜は、退院したばかりののどかにとって新世界の入り口の桜でもあるのが特徴だ。舞い散る桜の花びらがのどかの高揚感につながっていて、とても良い。
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 のどかの体を気遣ってパートナー解消を告げるラビリン。それでもプリキュアとしてパートナーでいたいと願うのどか。二人が再び心通わせるシーンは桜に加えてハレーションが鮮やかで印象に残った。のどかとラビリンを祝福するかのような世界の色。
 今まで病院で寝ていたのどかに対して背中を押すように彩られた景色に心惹かれたエピソードだった。
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7,『安達としまむら』 第1話 「制服ピンポン」
脚本:大知慶一郎 絵コンテ:桑原智 演出:吉村文宏 作画監督:薄谷栄之、五月麻帆、Lee Min-bae、ウクレレ善似郎
 「弾む」モチーフたちが印象的だったエピソード。
 サブタイトルにもあるピンポン玉もそうだし、雨粒もそう。しまむらが「人付き合いって素潜りに似ている」と語るイメージシーンにおいても、潜っては水面に戻る「弾み」のような動きがある。「弾み」は安達としまむらの関係性が作り上げられていくポジティブな表現もあるが、「弾み」は時間を経て弱くなっていくネガティブな表現としても使われていて、「弾み」だけにモチーフの弾力性が面白かった。
 水面に弾むピンポン玉、というのも面白い。空へ落ちて弾んでいくように見えることで意味づけが更に自由になる。
 ピンポン玉の音や雨音が強調されていたのも印象に残る。耳からも感じ取れる「弾み」がモチーフの意味づけを強化している感じがした。AS1.png
 
 ラストシーン、飛行機のマネをするしまむらのモノローグがすごく好きだ。
「かすかな高揚感が、私に翼を与えた。恥ずかしがるまで、あと何歩かかるだろう」
 高校3年間だけの制服姿。高く弾んだピンポン玉の音。その有限であるからこその響き、輝きがこのモノローグに、そして「制服ピンポン」というサブタイトルにも感じられて、とても良い。vlcsnap-2020-12-30-07h46m32s614.jpg
 

8,『メジャーセカンド 第2シリーズ』 第25話 「キミとまた…」
脚本:土屋理敬 絵コンテ:渡辺歩 演出:八木綾乃 作画監督:髙田晴仁、稲手遥香、菅原美幸、早川麻美
 野球への熱意という魔法が解けて、雲に覆われる目指すべき頂点。風林中野球部の中心に立つ大吾の「魔法」が溶け、風林中ナイン達も自分たちにかかった「魔法」に再び向き合い始める。
 曇天模様の描き方がとてもいい。登場人物にかぶさるような雲の重たさ、暗さ。空を見ずに反芻する野球への熱意は、形は違えどそれぞれにあって、ブレずに存在することを確認し合う。空が重ければ重たいほど、一度悔しさを噛み締めたからこそのブレない想いが際立って見えた。
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 大吾を諭す吾郎がまた良い。実直すぎるからこそ多少遠回りしたが、まさしく直球で問いかける野球への熱意と、それに答える大吾の関係性がどこまでも清々しい。吾郎のグラブに収まる大吾のキャッチャーミット。親子の絆が野球を通して存在していることがわかる演出だ。
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 水たまりになったホームプレートをスポンジでとる大吾。集うナイン。目線を落としたその後に、再び頂上を見据える。
 「野球が好きだ」という想いを軸に、反芻して再起を図るその実直さが胸に刺さるエピソードだった。
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9,『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』 第11話 「想いは、触れた熱だけが確かに伝えている。」
脚本:大知慶一郎 絵コンテ・演出:鈴木龍太郎 作画監督:五十子忍、川島尚、立田眞一、林信秀、細田沙織
 八幡の口から「話すだけじゃ伝わらない」というセリフが度々出てくるが、本エピソードではセリフで伝えられないからこそ際立つ映像演出と劇伴があった。
 Aパートの結衣とのシーンは夕景と開けた公園のベンチ。同じベンチに座りながら少し隙間の空いた距離感に、サブタイトルの「想いは、触れた熱だけが確かに伝えている。」という言葉の残酷さというか、果たして本当に結衣の気持ちは伝わったのだろうかと思う。「じゃあさ、」と乗り出した結衣が続けようとしていた言葉はなんだったのだろうか。結衣が受け止めた八幡の言葉に、どれだけの齟齬が隠れているのだろうか。
 ただこうした「隙間」こそが遠回りを続けていた本作品の魅力でもあり、八幡と結衣の関係の切なさに繋がる。
 一方でバックショットで映す二人の距離、結衣の瞳の反応だけが明確なように感じられて印象的だった。

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 Bパートは雪乃と夜の陸橋。二人が触れる手は結衣のシーンとは対照的だ。関係性の変化を感じ取って先へ行こうとする雪乃の手を取る八幡、という構図からして、出てくる言葉は抽象的だが明確な違いがある。一本道の陸橋というシチュエーションもそうだ。歩くスピードは違えど、雪乃が振り向けばそこに八幡がいる。演出面も手前、奥を意識した芝居や主観カットがあって、横位置の関係性だけではない二人を作り出していた。
 劇伴はピアノバージョンのユキトキ。「触れた熱」がついに二人に春を告げた、ということか。
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 意識してサブタイトルに引き寄せられることってあまりなかったけれど、本エピソードはサブタイトルの強さもあってそれを前提にして見ていた。新鮮な映像体験だったと思う。


10,『呪術廻戦』 第13話 「また明日」
脚本:瀬古浩司 絵コンテ・演出:田中宏紀 作画監督:田中宏紀、伊藤進也、北村晋哉
 年末に突如きた田中宏紀回。田中さんの圧倒的な画力に飲み込まれる快感。ここ数年の田中さんのお仕事でも特に『呪術廻戦』13話は良かった。
 本エピソードは「手」と「目」が印象的。「手」はシーンごとに描き込まれたもの、シルエット調のものが複数の角度から描かれていてその変幻自在さに痺れた。「目」も描き込まれたディティールに惹かれる。真人の目は特に描き込まれていて、真人の「異常さ」の表現の一翼を担っていた。
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 手の動きは言わずもがな、目の動きにこだわっているカットも多い。モノローグに合わせて脱力、黙考、決断を瞳と目の周りのディティールでみせているのが面白かった。一瞬の思考を的確に映していくからアクションの間のモノローグに間延びした感じがない。緊張感が続くアップショットが素晴らしい。
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 アニメーションの表現の幅広さ、そして田中さんの絵に溢れる魅力を再認識できる一話だった。




 以上。
 今年はシリーズ全体を通して好き、みたいな作品が多かった気がする。『ミュークルドリーミー』、『ちはやふる3』、『デカダンス』、『映像研には手を出すな!』、『かぐや様は告らせたい2期』、『ゴールデンカムイ3期』…どれも大好きな作品だけど、だからこそ一話選ぶのが難しかったな。
 今年は世間様を置いといて考えると、たくさんのアニメに手を出したうえ、演出や作画のカテゴライズにも更に興味が湧いてきてしっちゃかめっちゃかな年だった。すごく楽しかった。
 来年はどこまでアニメに時間を費やせるかわからないけど、ニッチにカテゴライズしたものをブログで書けたりしたら楽しいかな、と考え中。10選を書いていて思ったけど、やっぱりブログ書くの面白いな。プライベートに良い意味で激震走りまくっているけれど、これまで通りアニメを楽しく見られれば尚良し…。


 来年も素敵なアニメに出会えますように。
 

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